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消費税率引き上げのすゝめ――世代間の公平性の確保を図り、未来への投資を可能とする前向きな議論をすべきとき

政治
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「現役世代の疲弊が止まりません」

そうした声をあちらこちらで見聞きします。少子高齢化が進む中、財源の偏りが続き、現役世代に課される負担が過剰となっています。その主な要因は、消費税率引き上げが適切なタイミングで行われなかった点にあります。

消費税は、広く社会全体で負担を分かち合う税制であり、その税収が十分に確保されない限り、少子高齢化が進むなかでは現役世代に過剰な負担が集中する構造から脱却することは困難です。しかし、現在もなお、消費税率の追加引き上げについての議論がほとんど行われていない状況です。

歳出全体に占める高齢者向け支出の割合は、社会保障制度を中心に年々増加しており、現役世代への過度な負担の一因となっています。この偏重を是正し、「現役世代の疲弊」を解消するためには、高齢者向け支出の「割合」を低下させることが必要です。しかし、高齢者向け支出は義務的経費として法的に保障されている部分が多く、支出そのものを大幅に抑制することは現実的には困難です。そのため、歳出規模そのものを拡大することで高齢者向け支出の「割合」を相対的に低下させることが現実的な解決策となります。

消費税は、特定の世代に負担を偏らせず、全世代が公平に負担を分かち合う仕組みです。その税率を引き上げることによって歳入の増加が期待でき、これにより歳出全体における裁量的支出の割合を拡大する余地が生まれます。裁量的支出の拡大は、政府が現役世代向けの政策を積極的に推進するための財源を確保することに直結します。消費税率の引き上げは、単に歳入を増やすだけでなく、教育や子育て支援、労働環境の整備、経済政策といった現役世代への投資を可能とし、中長期的な経済成長を支える基盤を築くことにもつながります。結果として、高齢者向け支出の「割合」が低下し、「現役世代の疲弊」は解消に向かうでしょう。

これまでの消費税増税は、増え続ける社会保障関連支出に財源が圧迫される中でやむを得ず行われたため、前向きな効果は限定的でした。結果として、社会保障費を埋めるための増税となり、現役世代への還元や経済成長を支える施策に十分活用されることはありませんでした。

財政状況が改善しつつある今だからこそ、消費税率引き上げを通じて世代間の公平性を確保し、社会全体の未来への投資を可能にする時です。現役・将来世代を支える政策を強化し、持続可能な社会を築くための前向きな議論を開始するべきではないでしょうか。

※ここでいう歳入・歳出には、社会保険制度を含みます。
※消費税増収の一部を社会保険料率引き下げの原資として活用することを想定しています。

補足:消費税は一時的に引き下げを行ってはいけない

消費税率は、経済情勢にかかわらず引き下げるべきではありません。一度でも税率を引き下げると、消費者は「今後も景気の悪化時に税率が下がるかもしれない」と期待するようになり、その結果、消費行動が抑制され、経済に悪影響を及ぼします。これが自己実現的に作用すれば、景気停滞・後退の局面でさらなる税率引き下げを期待する動きが強まり、消費の停滞が長期化します。結果として、景気の振幅が大きくなり、経済政策の一貫性が損なわれるだけでなく、経済問題への対処がますます困難になるでしょう。

私が参議院選挙までは国民民主党に投票しながら、今回の衆議院選挙では支持を見送った理由の一つもここにあります。参院選での国民民主党の公約では、「コロナ禍が収束し、経済が回復するまで」という条件付きで消費税率の引き下げが掲げられていました。この条件は、経済的要因と結びついてはいるものの、コロナ禍という特殊な外的要因から脱却することを条件としているため、消費者の期待を過度に刺激しない設計といえました。一方で、今回の衆院選において掲げられた「実質賃金が持続的にプラスになるまで」という条件は、消費者に「賃金が上がらなければ税率が低いまま」という期待を抱かせる自己実現性の問題を含んでいます。こうした条件付きの税率引き下げは、消費者心理を通じて消費抑制を助長し、景気を停滞させ、停滞を長引かせるリスクがあります。

消費税は安定財源であり、その性質上、経済情勢に左右されない中立的な運用が求められます。景気刺激策として税率引き下げを一時的に行う場合であっても、解除条件は経済とは切り離された客観的で独立した要因(例: パンデミックの終息宣言など)を基準とすべきです。さもなければ、消費者心理を通じた副作用によって、景気対策としての効果を大きく損ねてしまいます。

以上の観点から、消費税率の引き下げを微塵も感じさせない政権運営こそ、経済の安定を図る上で最も適切と考えます。税制においては、一貫性と予見可能性が何より重要です。国民に税制への信頼を持たせ、安定的な消費行動を促すためには、消費税率の変更を一時的であっても慎重に避けるべきです。

一方、消費税に対する国民の拒否反応を完全に解消することが難しいという現実も否めません。この点については別の機会に詳述したいと思いますが、社会保険料率の引き下げとセットで実施することで、消費税への忌避感が特に強いとされる若年層への効果的なアプローチが可能になるのではないかと考えています。

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