新電力各社の料金改定・事業撤退~実質100%再エネ「グリーンオクトパス」(オクトパスエナジー)という選択

ライフプランニング
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※この記事は、2022年4月にはてなブログに掲載した記事を移行したものです。記載内容は当時のものから必要に応じて加筆修正していますが、古い記載が残っている可能性があります。
※文章中、特に断りのない限りは東京電力エリアについての記載となります。
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はじめに

2016年4月の電力の小売完全自由化から6年が経ちました。登録小売電気事業者は752事業者(2022年4月6日現在)にもおよび、玉石混合の乱立状態となっています。新電力の一部では、足元の資源価格の上昇を受けた発電コストの上昇や電力卸売市場の価格高騰を受けた電源調達コストの上昇に圧迫されて、小売電気事業から事業撤退する事業者(エルピオ、Natureスマート電気、あしたでんき、自然電力、TERASELでんきなど)、料金改定する事業者(楽天でんき、TERASELでんき・グランデータ、Looopでんき、0円でんきなど)、はたまた市場連動型プランに強制移行する事業者(グランデータ)まで現れています。

新電力の事業撤退や料金改定は、単に資源価格が上昇しているというだけではなく、それ以外の事業環境の変化を受けて事業構造上の問題を先送りにしてきた事業者が影響を被って起こっている形であり、まだまだ序盤と言えます。電源構成を公開していない事業者や卸電力取引所からの調達が多い事業者を中心にさらに広がっていくでしょう。

※電源構成の開示について、経済産業省は「電力の小売営業に関する指針(令和3年4月1日最終改訂)」において指針を定めています。この指針は改訂を重ねており、対応できない事業者等は公表を見送っています。このため、電源構成については直近の実績値と計画値を公表しているかという点が重要です。ただし、特定契約に基づいて卸電力取引所を介して取引を行う場合、電源構成は卸電力取引所として表示される場合がある点には留意する必要があります(この場合、契約の相手方との間で契約価格と市場価格との差額の受渡が行われるため、市場価格の影響を受けません)。

私は、東京電力からスマ電(アイ・グリッド・ソリューションズ)、CDエナジーダイレクト、ソフトでんき(SBパワー)を経て、4月からOneでんき(グランデータ)に移行しましたが、市場連動型プランへの強制移行の発表を受けて、早々に5月からオクトパスエナジー切り替えることとしました。

なぜ新電力は追い詰められているのか?

最近になって、新電力の新規受付停止や料金改定、事業撤退が相次いでいます。資源価格高騰が原因などと言われますが、これはある意味では正しく、ある意味では不正確です。資源価格高騰が原因であれば、大手電力を含めた各社の料金が上がる(そして概ね燃料費調整額でカバーされる)だけであり、事業撤退までする必要性はありません。下図で示す通り、平均燃料価格の変動率と電力市場価格の変動率の大きな乖離が見られ、それが新電力を追い詰める本質的な原因となっています(下図では2012年3月を基準月として置いていますが、特異月を除く近年の平均的水準を基準とすれば、乖離がおさまっているように見える直近においてもなお大きな乖離があります)。

上昇を続ける平均燃料価格と高止まりするエリアプライス

新電力が電力を調達する手段のひとつとして、日本卸電力取引所(JEPX)での入札があります。JEPXのスポット市場では、翌日の30分単位に区切られた枠で数量と価格を指定して入札を行い、売り入札と買い入札の数量が一致した価格で取引が行われます。

買い手は、翌日の電力需要の予測に基づき、すでに自社の発電所や相対取引などで確保している電力量を差し引いて、需要予測を満たすだけの電力量をJEPXで確保する必要があります。確保できなければ、インバランス料金という罰金のようなものを支払う必要があります。このインバランス料金の上限は、通常時80円/kWh、逼迫時200円/kWhと法令で定められています。買い手が必要な電力量の確保に自信がない場合、インバランス料金の上限ギリギリの値段で入札する傾向があります(この場合でも約定価格は売り入札と買い入札の数量が一致した価格ですので、入札価格よりも安く買えることの方が圧倒的に多いです)。

では、売り手はどのように入札価格を決めているのでしょう?ここが新電力をめぐる最近の動向を読み解く上で非常に重要になってきます。

主要な売り手である大手電力会社(旧一電)グループは自主的な取組みとして、余剰電力の全量を限界費用ベースで売り入札しています。限界費用とは、1単位追加で発電するために必要な1単位あたりのコストのことです。これを発電所ごとに算出して、売り入札価格を決定しています。

そして、昨年末以降、大手電力会社は相次いでこの限界費用の考え方を大きく改め、従来は「調達済み燃料の加重平均価格を限界費用に係る燃料価格」としていたものを、「追加的な燃料調達価格を考慮した価格」に変更しました。

東京エリアにおけるJEPXスポット市場への入札価格に反映する限界費用の考え方を、LNGスポット調達等追加的な燃料調達価格を考慮した価格に見直すことといたします。電力・ガス取引監視等委員会の確認が完了した日以降、適用を開始します。

引用元:JERA2021年11月24日付プレスリリース「2021年度の冬期重負荷期の需給対策について

火力発電所の発電に使用されるLNGの多くは20年などの長期契約によって調達されています。LNGの長期契約における契約価格は、原油価格を変数とする計算式(LNG価格ではなく原油価格です。OPEC +による生産調整が行われるため、原油価格の変動はLNG価格に比べて緩やかです。)によって決定されています。長期的に見れば、LNGの長期契約価格の上昇率は原油価格やLNGスポット価格の価格上昇より緩やかとなっています。そして、現状、LNGスポット価格は長期契約価格を大きく上回っている状況です。

前述した限界費用の考え方の変更点に戻ると、「調達済み燃料の加重平均価格」は主に長期契約価格によって決定され、「追加的な燃料調達価格」は主にスポット価格によって決定されます。つまり、限界費用の算定において用いる燃料価格が長期契約価格からスポット価格に変更されたことになります。これが、昨年末以降、売り入札価格が大幅に上昇し、現在も高止まりしている背景です。

もちろんスポット価格が大幅に低下して長期契約価格を下回る状態になれば、従来より売り入札価格は低下することとなりますが、中国・インドの購入量の増加、ウクライナ情勢による資源価格の上昇、ロシアによるルーブル建支払いの強要、各国政府によるルーブル建支払い拒否の方針などを踏まえれば、そうした可能性は当面は限りなく小さいものと考えられます。

そして、大手電力会社の料金体系が、長期契約価格を主たる構成要素とする燃料費調整額によって決定されている以上、LNGスポット価格が影響するJEPXの電力スポット市場から調達せざるを得ない一部ないし多くの新電力は劣勢に立たされており、LNGスポット価格の下落まで耐え抜くか、料金改定して価格競争力を失うか、あるいは諦めて事業撤退するか、という選択を迫られている状況なのです。

ここまで聞くと大手電力会社が悪いように感じられる方もいると思いますが、限界費用の考え方の変更にもそれなりの理由があります。その背景にあるのが2021年1月に発生したJEPXにおける市場価格の高騰です。当時の高騰は、電源を供給してしまうとLNGを長期契約によらずに高いスポット価格などで追加調達しなければならならず、そうした調達を避けるために発電余力があっても売り入札しないという「燃料制約」を一因としていました。その後、「燃料制約」による電力需給の逼迫を防止する観点から数ヶ月にわたって議論がなされた結果、限界費用の考え方の変更に繋がっています。

むろん、新電力各社が自社で発電所を保有するなどして電源の開発・調達をしっかりと行なっていれば、このような事態には陥らなかったでしょう。大手電力会社の自主的取組みに甘えて、事業リスクを認識していなかった、あるいは認識していても対策をとってこなかったことは、経営判断の大きな過ちであり、同情の余地はありません。

グランデータ(Oneでんきなど)の約款変更について

※特に断りのない限りはOneでんきフリープラン・従量電灯B相当(東京電力エリア)の記載となります

約款変更の内容は、①燃料費調整額の上限撤廃➁燃料費調整額の追加調整の2点です。約款変更の効力発生日は2022年5月1日となっており、①「燃料費調整額の上限撤廃」は5月検針日以降の利用分(6月検針分・7月請求分)から、②「燃料費調整額の追加調整」は9月検針日以降の利用分(10月検針分・11月請求分)から、それぞれ適用されます

約款変更のポイントは、市場連動型プランへの強制移行であるという点です。「燃料費調整額の追加調整」という名目で電力卸売市場価格(日本卸電力取引所JEPXのスポット市場取引のエリアプライス平均値の3ヵ月平均)に連動する形となります。市場価格が一定の範囲内(8円~11円)の場合は調整なしとなります。足元の市場価格は20円前後~30円前後となっています(グラフ参照)。

電力小売完全自由化以降のエリアプライス東京の推移

※エリアプライス東京の平均値は30分単位の各コマの約定価格を単純平均して算出しています。グランデータの約款においてエリアプライス平均値の定義がなされていないため、同社の買い約定数量を用いた数量加重平均の可能性もあります。その場合、各コマの約定価格・約定数量によっては上記の単純平均よりさらに高額となる可能性があります。

今回の約款変更は「燃料費調整額の追加調整」というわかりにくい項目を約款に追加することで、プランの根本的な性質を変えてしまう恐ろしいものです。他社と比較しやすいように簡易的な計算式を示しておきます。

Oneでんきフリープラン・従量電灯B相当(東京電力エリア)
(1)A>11円(/kWh)のとき
   (A+15.4円+燃料費調整単価+再エネ賦課金単価)×消費電力量
(2)11円≧A≧8円(/kWh)のとき
   (26.4円+燃料費調整単価+再エネ賦課金単価)×消費電力量
(3)8円>A(/kWh)のとき
   (A+18.4円+燃料費調整単価+再エネ賦課金単価)×消費電力量
但し、A=JEPXエリアプライス平均値

これまでのエリアプライス東京月次平均の平均が11.06円なので、グランデータの新料金体系はざっくりに言えば、「市場連動型プランに移行します。市場価格に15.4円上乗せ※した価格で販売します。ただし、市場価格が11円以下となった場合には8円以上11円以下の部分の利益は当社が丸々いただきます。」ということですね。

※15.4円の上乗せは託送費や事業費を賄った上で粗利益を得るための上乗せであり、これ自体は(完全市場連動型であれば)妥当な水準かと思います。ただし、同社のプランは8円以上11円以下を連動させない(市場価格の下落を顧客に還元しない)設計となってますので、完全市場連動型ではありません。また、すでに限界的発電コスト(含、限界的燃料費)が含まれる市場価格に連動するにも関わらず燃料費調整単価を加減するという二重取りの構造となっています。

市場連動型プランは、グランデータのように一定期間の平均値をとるものと、時々刻々と価格変動するもの(ダイナミックプライシング)があります。後者のダイナミックプライシングであれば、市場価格の安い時間帯に電力を多く消費する方にとっては電力料金抑制のメリットがありますが、前者の場合にはそうしたメリットはなく、調達コストが上昇している中であえて契約する意義はありません。

「資源価格が上昇しているから多少の値上げは仕方がない」と悠長に構えてらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、グランデータの約款変更の趣旨は、平均的な発電コストに係る燃料費を反映した値上げというわけではなく、平均的な発電コストから調達コストへの小売価格算定方式の変更です。そして、調達コストである電力卸売市場の価格は、前述の通り、平均的な発電コストではなく、限界的な発電コストと電力需給によって決定されます(新電力が需要量を賄うだけの電力を確保できなかった場合の罰金であるインバランス料金が価格上限として機能しています。インバランス料金も時々刻々と変化しますが、この上限は需要逼迫時は200円/kWh、通常時は80円/kWhと法令で定められています。)。市場価格は、資源価格が変動して各発電所の限界的な発電コストが変動して売り入札価格が変動するという側面と、発電所の稼働状況や天候などによる発電量の変動、季節や時間帯、天候などによる需要量の変動に応じて、市場において売り入札・買い入札が出され、その強弱によって価格が決定して変動するという側面があります。

今回のグランデータの約款変更は、料金の算定に電力卸売市場の価格を反映させるものであり、平均的な発電コストの変動のみを変動要素とするプランを契約したはずの利用者の契約の目的に反するものだと思います。契約者の皆さんには他社への切り替えを強くおすすめします。

なお、グランデータに違約金がかかるとの不安を持たれている方も多いようですが、基本的には、サービス提供元・小売電気事業者がともにグランデータの場合には解約事務手数料は発生しません。ただし、個々の契約内容にもよりますので、まずはマイページの約款情報タブから重要事項説明書を確認してみましょう。

他社への切り替えの際は、グランデータへの連絡は不要です。切り替え先の電力会社に申し込みましょう。同社に確認事項がある場合は、グランデータサービスサイトの電話予約フォームから電話予約を行うことができます(Oneでんきのサイトにはありません)。申込みしてしまってまだ供給開始前だけど、グランデータへの電話が繋がらないという方。グランデータサービスサイトにお申し込みのキャンセルのページが新設されています。

グランデータ「Oneでんきフリープラン」の料金体系(2022年8月検針)
グランデータ「Oneでんきフリープラン」の料金体系(2022年9月検針)
グランデータ「Oneでんきフリープラン」の料金体系(2022年10月検針)

私の選択―TGオクトパスエナジーの実質再エネ100%プラン「グリーンオクトパス」

グランデータの約款変更を受けた切り替え先の選定では、エネチェンジの試算結果のみでグランデータを選んでしまった自分自身の愚かさを反省し、事業状況などを含めて多角的かつ慎重に検討しました。その結果、TGオクトパスエナジーの実質再生可能エネルギー100%プラン「グリーンオクトパス」を選びました。

オクトパスエナジーは事業開始間もないため評判・評価はまだ未知数です。そこで私が調べた限りで同社について紹介したいと思います。

TGオクトパスエナジーは、英オクトパスエナジー社(Octopus Energy Group Limited)と東京ガスが2021年2月に設立した合弁会社です。同年11月にベータ版でのサービス提供を開始し、2022年1月に本格的にサービス提供を開始しました。英オクトパスエナジー社は、元米国副大統領アル・ゴア氏が共同経営する投資ファンド、ジェネレーション・インベストメント・マネジメントをはじめとする投資家から出資を受けるグループです。

他社の再エネプランが通常プランより高い料金設定となっている中、同社の提供する「グリーンオクトパス」は同社の通常プランより安く設定されており、「環境に優しい※選択=家計にも優しい選択」という未来を先取りして実現しています(下表参照)。再エネプランでは最安水準かと思いますし、他社の通常プランと比較しても遜色のない水準かと思います。

※環境に優しい電気かどうかは、電源構成ではなく非化石証書の比率やCO2排出係数を確認してください。小売電気事業者が調達できる電源のすべては電気と環境価値に分離されており、環境価値は非化石証書によってのみ担保されます。電源構成でFITや再生可能エネルギー(太陽光など)と表示されていても非化石証書がない場合は環境価値のない電気(環境に優しくない電気)となります。再生可能エネルギー由来の電気だけども環境価値は他者に譲渡されていて環境価値のない電気となっている例としては、ソフトバンクでんきの「FITでんきプラン(再生可能エネルギー)」(プラン終了)が挙げられます。なお、「非化石証書(再エネ指定なし)」は原子力発電を含みます。
※環境に優しい電気がなぜ安いのか疑問に思われる方もいるかと思います。オクトパスエナジーのグリーンオクトパスが通常プランより安く設定されているのは同社の見せ方であり、大半の申込者がグリーンオクトパスに申込むことを想定して価格設定がなされていると思われます。直近の入札(2022年2月10日)におけるFIT非化石証書の平均約定価格は0.30円/kWhであり、プラン料金の中で吸収できる範囲内ですので、おそらく皆さんが思っているほどには環境価値を提供するコストは高くありません。
※「グリーンオクトパス 2022-04-v1」は現在、東京都のEV補助金の対象メニューではありません。次回申請に向けて動いているとのことです。

「グリーンオクトパス 2022-04-v1」料金表
電力料金シミュレーション」ではオクトパスエナジーの料金試算フォームを掲載しています(東京・中部エリアのみ対応)。

上記料金プランのほか、東京電力エリアにおいては2022年8月4日現在、β版として「EVオクトパス」が提供されています。基本料金は上記と同様、10Aあたり9.40円/日、電力量料金はEVタイム(2:00~4:00)12.60円/kWh・スタンダードタイム25.80円/kWhとなっています(別途、燃料費調整額+再エネ賦課金)。

TGオクトパスエナジーは東京ガスのバランシンググループに参加しています。バランシンググループとは、発電や電力調達において、共同で運営を行うグループです。新電力は30分当たりの発電量+調達量と需要量をバランスさせる必要があります(厳密には違いますが、イメージとして捉えてください)が、これを共同で実施してボラティリティを抑制し、リスクの低減を図るものです。なお、グリーンオクトパスの電源構成(今年度計画値)における日本卸電力取引所(JEPX)からの調達割合は16.46%であり、相対での調達がメインとなっています(電源構成の計画値が公表されている点は安心材料です。)。

TGオクトパスエナジーの提供エリアは、北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州エリアと、沖縄県を除く全都道府県に広がっています(一部地域を除く)。エリアマップはありませんが、下記紹介用URLから郵便番号を入力すると、エリア可否とプラン料金が確認できます。なお、紹介用URLからのお申込みで友達紹介割(2回目以降の利用料金から5000円割引※)が適用されます。この際、「○○さんが、○○さんの紹介でオクトパスエナジーに加入してくれるそうです!」というメールがあり、お名前(姓名のうち名のみ)がお互いに共有されます※。
※現在、「タコ友 夏祭り」が開催されており、被紹介者の方の割引特典が8,888円に増額されます(2022年8月29日15:00まで)。
※2022年8月6日、マイページに紹介一覧が新たに追加されていることを確認しました。この一覧にはお名前(性名)が表示されています。

今回、楽天でんきやTERASEL、グランデータ、0円でんきなどが既存顧客に対して値上げとなる料金改定を行いました。特に「燃料費調整額の上限撤廃」は、金融の世界に例えると、都合が悪くなったからオプションの権利行使価格を一方的に変更するようなもので、絶対にやってはいけないことです(というよりできません)。「発電コストが高くなっても上限があるから安心だよ」と言っておきながら、いざ上限が適用されようかという段階になって「やっぱりやーめた」と言ってるわけですから、到底このような企業は信用に値しません。もともと上限を設定すべきではありませんでした。今後も顧客に対して不利益変更を繰り返す恐れがあります。いま提示されている条件はいま現在のものであって、明日には変わってるかもしれないのです。

一方、TGオクトパスエナジーは従量料金の値上げですら、既存プランの新規申込停止と新プランの提供開始を行なって既存顧客には既存プランを適用するという形で当面は影響がないように調整を行ったようです。この点でも同社の姿勢の誠実さに安心感を覚えます。インフラ企業としての責任を認識していると言えるでしょう。なお、こちらはもともと燃料費調整額の上限の設定はありませんでした。

私が慎重に調べて選択した「グリーンオクトパス」。グランデータの方だけでなく、エルピオでんきや楽天でんき、TERASELでんきなどの方にとっても、切り替え先の候補になりうると思います。特に東京電力エリア・中部電力エリアにおいては、自信を持っておすすめします。

TGオクトパスエナジーへの確認事項などがある方は、カスタマーサポート(0800-080-7927/ hello@octopusenergy.co.jp )に連絡しましょう(メール推奨)。マニュアルに捉われない対応を信条としているそうですので柔軟に対応いただけると思います。
※同社では、他社の急な値上げを受けた切替などにも柔軟に対応しています。2022年8月3日現在、Looopでんきからの切り替えは値上げに間に合うよう対応しているとのことです。

残念ながら目ぼしい新電力が供給エリア外や新規受付停止中の方は慌てずに、一旦は地域電力会社(九州電力など)と契約するのもひとつの手かと思います。

料金比較(8月検針分~9月検針分)

私は、料金だけではなく、環境への姿勢や事業の継続性などさまざまな観点から契約先を考えるべきだと考えています。しかし、そうはいっても、料金は気になるものです。そこで、この記事で言及した会社、及びエルピオからの切替が多かったとみられる会社の料金を比較してみました。

8月検針分は、東京電力エリア(30A、40A・60A)・中部電力エリア(60A)・関西電力エリアにおけるオクトパスエナジー・TERASELでんき・楽天でんき・ENEOSでんき・Oneでんきを比較対象としています。また、9月検針分は、東京電力の「アクアエナジー100」と奈良電力の「ならでん電灯A」を追加しています。

2022年8月検針分電力料金の概算比較表
2022年9月検針分 電力料金の概算比較

8月検針分では、燃料費調整単価の上限を大きく上回る関西電力エリアにおいて、上限設定のあるENEOSでんきが料金面で優勢な形となりました。

9月検針分では、燃料費調整単価の上限を維持しているENEOSでんき(燃料費調整単価上限あり)が、新たに上限に達した東京電力エリアにおいても料金面では優位な形となりました。また、使用量が平均的水準より多い世帯においては、東京電力エリアでは東京電力の「アクアエナジー100」(燃料費調整制度なし)が、関西電力エリアでは奈良電力の「ならでん電灯A」(燃料費調整単価上限あり)が、それぞれ優位となっています。なお、「アクアエナジー100」は水力発電100%のプランであり、非FIT非化石証書100%の使用によって再生可能エネルギー100%とみなされます。

燃料費調整単価の上限の有無による他各社の相対的な優劣は、今後の燃料費調整単価によって変動します。燃料費調整単価の動向については、別記事「貿易統計から見る電力料金の現状と先行きー11月燃料費調整単価のピークを予想する」で触れている通り、私は冬場のピークアウトを予想していますので、友達紹介割も考慮すれば、東京・中部エリアではまだまだオクトパスエナジーにも料金面での優位性があると考えています。

※ENEOSでんきへ切り替えされる方は、2か月ほど時間がかかるエリアもあるようですので、早めに同社にお問い合わせください。8月8日現在、ENEOSでんきはWeb受付を停止し、代理店経由の受付となっています。

TRENDE株式会社の小売り事業撤退をどう捉えるか

2022年4月28日、あしたでんきなどのサービスを展開するTRENDE株式会社が全エリア・全プランの供給停止を発表しました。「東京電力グループの新電力が事業撤退」というニュースに「いよいよ新電力は大手がバックについていても危ないのではないか」と不安に思われている方も多いようです。

しかし、東京電力HDによるTRENDE株式会社への出資(現在は東京電力ベンチャーズに引き継がれています)は、「ベンチャー企業家に投資してみるか」といった感じの出資であり、両社の事業運営上の関わりはほとんどなかったでしょう。東京電力系列ではなく、VC投資先のいち新電力という色彩の濃いものです。

そして、東京電力HDは第4次総合特別事業計画において「価値の創出に大きくは貢献できない、又は不採算の事業については、積極的に撤退・縮小を断行していく」としており、こうした流れの中で投資家として「一般的な小売電力事業者としてのTRENDE株式会社」への出資継続はできないと判断された(あるいは経営陣自身が投資を受ける側としてそう判断した)のでしょう。蓄積された知見・ノウハウのほうは他で活かされるかと思います。

企業であれ新規事業であれ、ベンチャーにとって赤字は問題ではありません。事業が健全に成長しているか、事業を健全に成長させるに足る資金を調達できているか、という点が重要です。かつてのAmazonも大きく成長を続ける中、最終利益はずっと赤字でした。英オクトパスエナジー社は赤字の中でも投資家から広く資金調達できるだけの事業成長が見込まれています。一方の「一般的な小売電力事業者としてのTRENDE株式会社」など一部の新電力にはそれが見込めなかった、ただそれだけのことです。

英オクトパスエナジー社と東京ガスは2020年12月に戦略的提携を発表し、両社が計14億円(東京ガス70%・英オクトパスエナジー社30%)を出資して合弁会社としてTGオクトパスエナジーを設立するだけではなく、東京ガスグループが英オクトパスエナジー社に対して約200億円の出資を行なっています。また、TGオクトパスエナジーの社長は東京ガスから輩出しています。さらに、東京ガスの2050年カーボンニュートラルに向けた取組みとして明確に位置付けられています。東京電力HDによるTRENDE株式会社への出資(当初8000万円)とは関与の度合いがまったく違うのです。

もちろん、事業に絶対はありませんから事業環境の変化など今後の推移を見守る必要はありますが、TRENDE株式会社の事業撤退への反応として見られるような「東京電力グループのような大手がバックについていてもダメなんだから新電力はもうダメだ」という見方は行き過ぎた考えであり、各社毎の事業状況に目を向ける必要があると考えます。

私は、環境への姿勢と料金体系、事業継続性の観点から特に関東・中部はオクトパスエナジーをイチ押ししています。他のエリアにおいても、燃料費調整額の変動にもよりますが、実質100%再エネでこの料金体系は注目に値するサービスだと思います。

Looopでんきの市場連動型燃料費調整額への移行

2022年7月28日、Looopでんきは「今後の電力サービス方針ならびに約款改定に関するお知らせ」において、9月検針日以降の利用分から市場連動型プランに強制移行する旨を公表しました。

Looopでんき独自の燃料費調整単価の計算式は下記の通りです。

(日本卸電力取引所のエリアプライス月次平均-13)×1.1

7月のエリアプライス月次平均が3か月後の10月検針分(9月検針日以降の利用分)に適用されます。完全市場連動型(ダイナミックプライシング)のような「市場価格の安い時間帯に使えば電気代が安くなる」といったメリットは一切ありませんので注意が必要です。

一般の燃料費調整単価(改訂前)は9月検針分まで公表されていますので、9月検針分(改訂前)と10月検針分(改訂後)を比較してみました。

エリア改訂前(9月)改訂後(10月)
北海道6.8214.99
東北7.6714.00
東京6.5018.97
中部5.0613.01
北陸6.8111.96
関西6.1411.96
中国9.4311.74
四国7.5710.91
九州4.500.31
沖縄12.4512.98
算出元データ4-6月輸入燃料価格7月エリアプライス平均

エリアプライス平均によって有利不利が変わってくる地域もあるものの、基本的には前述したグランデータ同様、高騰する電力市場価格の影響が直撃する形となります。少なくとも電力市場価格が高騰する夏季・冬季のエリアプライス平均によって算出される秋季・春季のLooopでんき独自燃料費調整額の適用は避けた方が賢明かと思います。

10月検針分の料金体系の電力使用量別の試算は下記の通りです。

2022年10月検針分Looopでんき「おうちプラン」の料金体系

最後に家電製品の節電アイテムを紹介して終わりたいと思います。

「Nature remo mini 2」は、赤外線リモコンで操作するすべての家電製品を遠隔(ネット経由)で操作できるほか、様々な条件をトリガーとして自動的に家電製品を操作することができます。

例えば、「家に近づいたらエアコンをオン(GPS機能内蔵)」「朝7時に照明をオン」「28℃になったらエアコンをオン(温度センサー内蔵)」などといった使い方ができます。

うまく使えば、大きく節電することが可能です。私もこの製品の旧バージョンを利用しています。

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