ビットコイン先物ETFは総合課税?それとも分離課税?―暗号資産と税金の話

投資
この記事は約9分で読めます。
ビットコイン先物ETFは総合課税?それとも分離課税?―暗号資産と税金の話

画像:Pixabay

※この記事は、2021年10月にはてなブログに掲載した記事を移行したものであり、記載内容は当時のものです。なお、2022年6月においても暗号資産ETFの税制に変更はありません。

私は税理士ではありませんが、税理士や国税職員がいいかげんな回答をして個人投資家の方々に誤解と混乱を与えていることを憂慮し、現行法制上明確に規定されている暗号資産関連の課税方式をまとめることとしました。正確性を保証するものではありませんので、本記事は一意見として受け止めていただき、最終的な判断はご自身でなさりますようお願いします。なお、法令上の用語・用法については『』で括っています。

ビットコイン先物ETFは総合課税

昨年、ビットコイン先物ETF(BITO)がNYSE Arcaに上場しました。分離課税が適用されると期待を抱いている方も多いと思いますが、結論から言いますと暗号資産先物ETFは現行法制下では総合課税となります。

暗号資産:これはみなさんご存じの通り総合課税となります
暗号資産ETF(暗号資産現物を組み込んだETF):総合課税となります
暗号資産先物ETF(暗号資産先物を組み込んだETF):総合課税となります

分離課税とは?

分離課税にもいろいろあり、本記事に関連する部分で列挙すると、その対象となる所得は下記の通りです。
1. 一般株式等に係る譲渡所得等(租税特別措置法第37条の10)
2. 上場株式等に係る譲渡所得等(同法第37条の11)
3. 先物取引に係る雑所得等(同法第41条の14)

一般的なETFは、『上場株式等に係る譲渡所得等』として分離課税が適用されています。また、eワラント証券が取り扱っている「暗号資産先物レバレッジトラッカー」や「暗号資産先物インデックストラッカー」は、有価証券(暗号資産先物リンク債や暗号資産先物インデックスリンク債)を原資産とするカバードワラントと呼ばれる『オプションを表示する証券又は証書』ですので、『先物取引に係る雑所得等』として分離課税が適用されています

『上場株式等に係る譲渡所得等』とは?

暗号資産先物ETFもETF(上場投資信託)なのだから『上場株式等に係る譲渡所得等』として分離課税が適用できると誤解される方々もいるでしょう。しかし、暗号資産ETFや暗号資産先物ETFは租税特別措置法上の『上場株式等』には該当しません。これを確認するには、租税特別措置法・所得税法・投資信託法・投資信託法施行令などに目を通す必要があります。

ここでいう『上場株式等』は、租税特別措置法第37条の11第2項に規定されています。通常のETFは、『株式等で金融商品取引所に上場されているものその他これに類するものとして政令で定めるもの』(同項第1号)に該当します。

ここでいう『株式等』は、租税特別措置法第37条の10第2項に規定されています。通常のETFは、『投資信託の受益権』(同項第4号)に該当します。

ここでいう『投資信託』は、租税特別措置法第2条第1項第5号に規定されており、所得税法第2条第1項第12号の2に規定する『投資信託』を指します。

所得税法における『投資信託』は、投資信託法第2条第3項に規定する『投資信託及び外国投資信託』を指します。

つまり、暗号資産ETFや暗号資産先物ETFが租税特別措置法上の『上場株式等』に該当するためには、投資信託法にいう『投資信託及び外国投資信託』に該当する必要があります

『投資信託及び外国投資信託』とは?

投資信託法における『外国投資信託』は、『外国において外国の法令に基づいて設定された信託で、投資信託に類するもの』(同法第2条第1項第24号)を指します。また、『投資信託』は、『委託者指図型投資信託及び委託者非指図型投資信託』(同項第3条)を指します。そして、『委託者指図型投資信託』は、『信託財産を委託者の指図に基づいて主として有価証券、不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの(以下「特定資産」という。)に対する投資として運用することを目的とする信託であつて、この法律に基づき設定され、かつ、その受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とするもの』(同項第1条)と規定されています。

つまり、暗号資産ETFや暗号資産先物ETFが投資信託法に規定する『投資信託』又は『外国投資信託』に該当するためには、『特定資産に対する投資として運用することを目的とする信託』に該当する必要があります

『特定資産』とは?

投資信託法における『特定資産』は、投資信託法施行令第3条で定められています。具体的には、有価証券、デリバティブ取引に係る権利、不動産、不動産の賃借権、地上権、約束手形、金銭債権、匿名組合出資持分、商品、商品投資等取引、再生可能エネルギー発電設備、公共施設等運営権がこれに当たります。

ここでまず、特定資産として列挙される中に暗号資産が規定されていませんので、暗号資産ETFは、投資信託法にいう『投資信託及び外国投資信託』に該当せず、租税特別措置法にいう『上場株式等』に該当しないことがわかります。このため、暗号資産ETFは分離課税ではなく総合課税となります

『デリバティブ取引に係る権利』とは?

では、デリバティブ取引(暗号資産先物)に係る権利に対する投資として運用することを目的としている暗号資産先物ETFはどうでしょうか?

上記の特定資産としての『デリバティブ取引に係る権利』は、投資信託法施行令第3条第1項第2号に『デリバティブ取引(暗号資産(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項に規定する暗号資産をいう。第十九条第五項第二号において同じ。)及び暗号資産関連金融指標(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百八十五条の二十二第一項第一号に規定する暗号資産関連金融指標をいう。第十号ハ及び第十九条第五項第二号において同じ。)に係るものを除く。第十号ハ及びニ、第百十七条第四号並びに第百二十五条第一項第二号において同じ。)に係る権利』と規定されています。

わかりにくいので大事な部分だけ抜き出すと『デリバティブ取引(暗号資産および暗号資産関連金融指標に係るものを除く。)に係る権利』となります。つまり、暗号資産に係るデリバティブ取引である暗号資産先物に係る権利は、投資信託法にいう『特定資産』に該当しません

したがって、暗号資産先物ETFは、投資信託法にいう『投資信託及び外国投資信託』に該当せず、租税特別措置法にいう『上場株式等』に該当しないことがわかります。このため、暗号資産ETFは分離課税ではなく総合課税となります

結論と補足

以上から、暗号資産ETFや暗号資産先物ETFは、現行法上、解釈の余地なく総合課税となります。もちろん、将来的に法令改正が行われた場合にはこの限りではありません。

では、金融庁や国税庁による法令解釈が必要となるのはどのような場合なのでしょうか?例えば、前述した暗号資産先物リンク債や暗号資産先物インデックスリンク債に対する投資として運用することを目的とする投資信託が出てきた場合には、これらのリンク債は有価証券ですので、形式的には『特定資産』に該当するように見えます。

このようなケースでは、外形的に判断して『投資信託』に該当すると解釈するのか、あるいは実態は暗号資産・暗号資産関連デリバティブ取引に係るものであるとして『投資信託』には該当しないと解釈するのか、当局による法令解釈に基づく見解の公表が必要になるのではないかと思います。

「税理士が分離課税OKと言ったから」「税務署が分離課税OKと言ったから」で納税義務が免除されるわけではありません。税務署に間違いがあれば、法令に則って事後的に処理されますので、「分離課税で通った、ラッキー」と思わずに注意したいものです。

将来的には分離課税になるのか?

参議院財政金融委員会(令和元年5月30日)では、暗号資産ETFが分離課税の対象外であることを大前提として、暗号資産ETFについて質問・答弁がなされています。この問題を取り上げた藤巻健史委員の質問に対する金融企画局長の答弁は次のようなものでした。

 法律上の論点で申し上げさせていただきますと、このETFを組成するということについて、この入口の議論は、まず投資信託法上の投資信託になるということがまず入口としてございまして、今度、投資信託法上の投資信託はどういうふうになっているかと申し上げますと、これ特定資産というものがまず法律に定義されていまして、主として特定資産に投資して運用することを目的とする信託とされておりまして、また、特定資産とは何かということで、投資を容易にすることが必要な資産として政令などで定めるものとなっておりまして、この政令に現在暗号資産、仮想通貨というのは含まれておらないという状況でございます。
 ここに指定するかどうかということになりますと、先ほど申しましたようなフェアバリューというものは観念し難い等々の問題がありまして、これを一般大衆投資家に向けて投資を容易にすることが望ましい、必要な、こういった資産であるかどうかということがその判断の要素になってくるかと存じますが、現時点ではなかなかこうしたものに指定することについて広く理解を得ることは難しいのではないかというふうに考えております。

第198回国会 参議院 財政金融委員会 第12号 令和元年5月30日

ここでみなさん気づかれたかと思いますが、金融庁企画局長の答弁前段は、私がこれまでに説明してきた内容です。

そして、後段の認識にあるとなると、暗号資産の『特定資産』への追加は長い道のりが予想されそうです。

また、これに続く藤巻健史委員の「暗号資産が特定資産に追加されたら、暗号資産ETFは20%の分離課税になるのか」という趣旨の質問に対する国税庁次長の答弁は次のようなものでした。

 現行法令上、ETF、いわゆる上場投資信託の譲渡による所得につきましては、上場株式と同様、上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象となっているところでございます。そして、ただいま申し上げましたETFは、投資信託法に規定する投資信託又は外国投資信託に該当するものを指しているところでございます。
 お尋ねの暗号資産ETFの場合はということでございますけれども、先ほど金融庁から御答弁があったとおり、現時点で暗号資産を投資信託法上の特定資産に追加することは考えていないということでありますことから、現段階において国税当局からその税法上の取扱いについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

第198回国会 参議院 財政金融委員会 第12号 令和元年5月30日

この国税庁次長の答弁前段も、私がこれまでに説明してきた内容です。

そして、後段では、暗号資産を『特定資産』に追加した場合における税法上の取扱いについての答弁を差し控えています。これを「総合課税維持に含みを残した」と言っては勘ぐりすぎでしょうが、仮に暗号資産を『特定資産』に追加した場合においても将来的に分離課税となるかは未定であることには違いありません。

リンク

別記事「投資と投機の違い―資金を投じる際に焦点をあてているものの違いによる本質的な分類

コメント

タイトルとURLをコピーしました