いつからかマーケットの注目を集めるイベントとなったジャクソンホール会議。この記事では、その概要を確認した上で、2022年の見通しについて考えてみたいと思います。
ジャクソンホール会議とは?
ジャクソンホール会議(Jackson Hole Economic Policy Symposium)とは、カンザスシティー連銀が主催する経済政策シンポジウムです。毎年8月最終週にワイオミング州の景勝地ジャクソンホールで開催され、各国の金融政策当局者や経済学者などが参加して経済・金融に関する講演や討論が行われます。
2010年、バーナンキFRB議長が追加緩和を示唆したことで、以後毎年、マーケットの注目を集めるようになりました。2020年には、パウエルFRB議長の講演とタイミングをあわせてFOMCがnotation vote(回付による承認)による声明文を公表し、新たな物価目標を公表。議長講演も声明文にあわせた内容となりました。
2022年のジャクソンホール会議
2022年のジャクソンホール会議のテーマは「経済と政策への制約の再評価」です。
この1年は、資源価格高騰、供給制約、雇用市場の需給ひっ迫によって、インフレが高進した1年でした。そうした中でFRBは当初「インフレは一時的」などとして、一時的ではない要因が醸成されていることに気づかずに金融緩和を続け、現在のより粘着性の高いインフレへと悪化させてしまいました。
パウエルFRB議長講演では、マーケットが注目しているような目新しい材料は出てこないと考えています。これまでの金融政策の誤りを振り返った上で、インフレ抑制に関する制約として考えられていた部分(資源価格高騰・供給制約を主因とするインフレに金融政策が果たせる役割はない)について再評価を行った上で、金融政策の果たしうる役割について言及するのではないかと思います。
また、ロシアのウクライナ侵攻による国際社会の分断、それによるサプライチェーンの見直しに伴って、主として先進国がグローバル化の恩恵として享受してきた低インフレ環境が変容するものと見込まれています。そうした変化に対して金融政策が果たしうる役割について何らかの言及があるのか、個人的には注目しています。
過去のジャクソンホール会議のテーマ
2010年以降のジャクソンホール会議のテーマは下記の通りです。
開催年 | テーマ | 出来事 |
2010年 | マクロ経済の課題:今後10年の展望 | バーナンキFRB議長が追加緩和を示唆 |
2011年 | 長期的な成長の最大化に向けて | |
2012年 | 変わりゆく政策環境 | |
2013年 | 非伝統的金融政策のグローバルな側面 | |
2014年 | 労働市場の力学の再評価 | ドラギECB総裁が追加緩和を示唆 |
2015年 | インフレの力学と金融政策 | |
2016年 | 将来に向けた弾力的ある金融政策の枠組みの設計 | |
2017年 | グローバル経済のダイナミズムの促進 | |
2018年 | 市場構造の変化と金融政策への示唆 | |
2019年 | 金融政策の課題 | |
2020年 | 10年後を見据えて:金融政策への示唆 | FOMCが新たな物価目標を公表 (直前に回付で臨時FOMCを開催) |
2021年 | 不均衡な経済におけるマクロ経済政策 | |
2022年 | 経済と政策への制約の再評価 |
別記事「FOMC(Federal Open Market Committee)とは?」では、FOMCの概要について説明しています。
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